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2003年5・6月号Vol.51

P1■巻頭コラム&Photo:「NPOは三大本能発揮の場」
P2-3■「世界の苦しみ」に目を向ける ―世界市民としてのNPO/NGOに求められるもの―
P4■NPOに必要な経営力とは?―NPO経営コンサルティングの必要性―
P5■快適なパソコン環境を実現しよう!Aソフトウェア編
P6■上海的社会/市民事情Vol.1市民生活の変化と非営利組織の動き
P7■さまざまなNPOのあり方を探るVol.20 地域に根ざした生活拠点づくり 特定非営利活動法人み・らいず 

 

「世界の苦しみ」に目を向ける
―世界市民としてのNPO/NGOに求められるもの―

 

 一応の戦闘終結宣言が出されたとはいえ、イラクをめぐる軍事行動について疑問符が拭い去れない人は多いのではないだろうか。戦争に至ってしまったことに憤りを感じながらも、無力感を抱かずにおれなかった人も多いのではないかと思う。
 「よりよい社会」を目指して地道な活動を展開するNPO/NGOにとっても、これは一つの試練と言える。国際的な活動を行う団体のみならず、地域に根ざした活動を旨とする団体にとっても、直接的なかかわりをもつ社会を越えるより広い世界への視野は欠かせない。
 時に市民の力を超えた圧倒的な事態と写る現代の世界情勢の中で、市民としてできることは何か?「世界の苦しみ」に目を向け、その改善・解決のために本当に必要な行動を起こすとはどういうことか?
 アフガン難民を擁するパキスタンでのYMCAの取り組みの事例をご紹介する。

難民と共存する社会

 アフガニスタンと隣国であるパキスタンには多くのアフガン難民がいる。現在でも150万から200万人いると言われている。2001年9月11日のあとの難民も多いが、90年代タリバーン時代に圧政から逃れてきた難民、それ以前80年代ソ連のアフガニスタン侵攻の時に逃出した難民も多い。多くの難民はパキスタンのどの都市にも存在する。パキスタンでは、外国人である人々を同じ兄弟と見ているのか、街の一部に集落を作って生活しているアフガン難民をそのまま受け入れている様である。難民を受け入れている数が極端に少ない日本では、考えられない寛大さに驚かされる。
 ラホールはパキスタン第二の都市である。近代的なビルも多いが貧しさを感じるところが多い。街に出ると子どもが寄ってくる。はだしで汚れた服と顔で手を出して金を求めてくる。交差点では子どもが新聞、花束、キャンディーなどを信号待ちの車に持ってきて小銭を稼ぐ。そばでは足のない子が両手で支えて車の通る道を横切っていく。馬車、牛車、オートバイ、自転車、三輪のタクシーが車と同格に動きまわる。こんな道路で運転していない自分で良かったとつくづく思う。命がいくつあっても、これで生きつづけられるか不安になってくる。

人々の暮らし

 ラホールの北西にある(マンゾルパークと呼ばれる)川沿いに、ぼろ布をつぎ合わせたテントが一面に張られ、ゴミの山もあちこちにある。そこがアフガン難民の居住地となっている。400家族がそこに生活している。一家族10〜15人と言うので、4000〜5000人がそこにいることになる。男たちは10才くらいになるとラホールの街へ大きな袋をもってゴミ拾いに出る。缶、ビン、ビニール袋、布、紙などほぼ全ての資源が回収されている。資源再利用は日本の比ではない。何でも集められ、焼却されるものは無いに等しい。男が一日働くと約100円稼げると言う。それで家族を養う。小さい子どもたちは母親と一緒にいる。7、8才の女の子はほぼ全員小さい幼児を抱っこして遊んでいる。私たちが行くと動物園の動物を見るように好奇の目で近寄り、小さな動きやことばに笑ったり驚いたりする。カメラを向けるとフラッシュに歓声を上げる。顔は汚れ、はだしで服もきたないが、目の輝きと笑顔はすばらしい。日本ではこんなに沢山の子どもの集団に囲まれ歓迎?されることがないだけに感動させられる。小さい子もゴミの仕分けを手伝う。食べるのに必死なのだが、みんながそうだから苦とは感じていない様子である。
 100家族位が共用している井戸があり、そこから水をうまそうに飲んでいる。この井戸もあるNGOが3ヶ月前に作ったもので、それまでは遠くまでポリタンクやつぼのようなものをもって水汲みに出ていたらしい。アフガンの女性は10才を過ぎた頃から人前に出てこない。私たちがいくとすーっといなくなり、テントのかげに隠れてこちらの様子を伺っている。日中男は街に出ているので私たちを迎えるのは小さい子供とグループの長であるジルガと呼ばれる老人である。このジルガを中心にグループ(ほとんど血縁の部族からなる)の運命が決められ、守られている。私たちに要求するのもこのジルガが各グループを代表し交渉をしに来る。要求は様々だが堂々としていて決して媚びるような風はない。彼らにいつまで難民としてここにいるつもりか尋ねると、「平和が来るまで」と言う。アフガニスタンの北方から50家族くらいのグループとして集団で移動してきた。アフガニスタンでパシュトゥン人は多数いるが、地位は弱い立場にあるらしい。彼らが「平和が来るまで」と言うのは単に戦争だけでなく、経済的展望が獲得されるまでという意味かもしれない。少なくともあと2、3年はここにいることになるだろう。ここでの生活も悲惨だが、これまでの生活もそう変わらないのかもしれない。ことばの通じないパキスタンでの生活だが、家族と一緒で平和に過ごせ、ゴミを集めて自立した生計を営んでいる彼らは、しばらくここに滞在する覚悟でいるらしい。

NGOにできることは?

 必要なものは水、食糧、服、家、教育、医療、仕事など求めれば切りがない。何もないのだから。小さなNGOとして私たちが出来ることは何か、ジルガと話をして分かったのが、子どもたちへの教育となった。パキスタンで生活するためには母国語であるパシュトゥン語ではほとんど通じない。ウルドゥ語も英語も必要である。数字の勉強も必要。そして熱心なイスラム信者である彼らは子どもにコーランを学ばせたいと言う。そこで彼らのために小さな学校を作ることにした。学校の校舎は工場跡地(約60坪)を借りることにした。そこに先生を4人採用する。午前中に50人、同じように午後にも50人の生徒を教えることにした。もしかしたら1年後には帰るのかもしれない。洪水があったら全部流されるようなところにいるので、何が起きてもおかしくない。(事実、数日前にはアルカイダのテロリスト2人がこの地区に潜伏していることが分かり、国家警察が入り二人を逮捕した。)
 彼らは、自分たちの生活は全て自分たち自身でやっている。行政(パキスタン政府やラホール市当局)は黙認しているらしい。一切金は出さないが、そこにいて生活することに規制は作らない。勝手に入ってきたこの難民への援助はここ1年されていない。唯一あるNGOが井戸を作った位で、あとはその土地の地主が熱心なイスラム教徒であり、寛大にも居住を許していると聞く。(多少金を取っているらしいが)
 日本にいると全く知られていない、見えない人たちである。今回行って調べて初めて彼らの存在を知り、彼らの生活の現実を見ることができた。これを伝えて募金をし、学校作りをしたり、時には医療活動を行ったりするのは、まず先兵となる人であり、それを許すNGOの働きである。

「世界の苦しみ」とNPO/NGOの役割

 世界128の国と地域にYMCAがある。そのほとんどが開発途上にある国にあるYMCAであり、彼らのまわりには人間としての保障がない人たちが多い。難民もそうだが、貧困ゆえに働く子供はストリートチルドレンとなり、売春をさせられる少女もいる。そしてエイズも広がる。環境破壊もすさまじい。これら大きな社会問題に取り組むには、現地のYMCAはあまりにも小さく弱い。日本のYMCAに期待されているのは、現地のYMCAの働きを援助して、これらの課題に少しでも効果をあげる働きをすることである。
 かつてスリランカで、シンハリ族とタミール族の民族抗争があった20年の間、その両民族に存在していたYMCAが共に学びあい平和作りの話し合いを行ってきた。紛争の犠牲になったスタッフも何人もいた。しかし、昨年やっと両民族の和解が成立した。そんなスリランカYMCAの働きが社会でも高く評価されている。これは世界の国々がスリランカにあるYMCAの平和をつくる働きを支援し続けてきた事によるところも大きい。
 アフリカでのHIV/エイズ感染は世界の70%になる。南部アフリカのある国では、人口の20〜30%がHIV/エイズに感染している。今、世界のYMCAが現地のYMCAに金とスタッフを送り、教育活動を展開している。今に、インド、中国などアジアでも数十倍に拡がると予測されている。現地のNGOの働きを強化する、モニターする、応援する、そんな国際NGOが必要である。資金、働き手、技術や知識を海外から注入し、現地のNGOを正しい方向に導き、その働きを強化していく関心が何より求められていると感じる。日本のNGOが直接できることは小さいが、現地のNGOを支えることができれば自立した効果的な働きが生み出されるように思える。
 日本にいては世界の苦しみがなかなか見えない、感じられない。しかし、ちょっとした具体的な働きやその効果が見えてくると非常に寛大となり、応援を惜しまない人が多くいる。今NGOの役割は、世界の苦しみ、課題(もちろん国内においても)に対し果敢に対応していき、そのニーズを人々に伝えることではないかと思う。そうすれば、多くの人が関わりの場を求めてくる。そんな原動力となることがNGOに求められている。
(日本YMCA同盟 山田公平)

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