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昨今、NPOと政治との関係が注目されている。政治家の口からもつとに「NPO」の3文字が聞かれる一方で、NPO側には政治に関わることへのタブー意識があるのも事実。しかし、NPOの活動は本質的に政治との関わりが不可避な面をもっている。市民という存在にとっても、政治とどうかかわるかは本質的な問題であろう。これまでの“政治”イメージの見直しも含めて、NPOと政治の関わりを考え、模索していくべき時に来ている。
「NPOと政治」という問題状況
NPOと政治に関する論議が盛んとなってきたが、NPOの主張としては、NPOの目的を実現するための回路の一つとして「政治」に積極的にかかわることも必要だ、という意見であり、これまで首長部局との協働だけでなく、議会との連携も考えるべきで、政策提案の支援もNPOの役割ではないか、というものである。
選挙に関するNPO法の規制に関しては、団体としての関与はともかく、個人としての関わり・参加は全く自由であるという意見も多く見られる。そのなかで、本来政治活動やその活動をする人を選ぶ選挙はきわめて公益的なものだ、という認識は共通している。
これらの論点から、いまNPOの置かれた問題状況が垣間見られる。
問題のややこしさ
しかし、NPOと政治の関係はわかりにくい。このわかりにくさの原因として次の4点をあげてみる。
ひとつは、日本の戦後政治史あるいは市民運動史の「影」をひきずっていることである。戦後の、福祉や公害など、市民の生存基盤、生活基盤を守り、是正を要求する運動は、不幸にして(かどうかよくわからないが)保守と革新という政党の二項(三項)対立の構図の中で動いてきたという歴史性である。そして、この構図の実態は、野党の力を借りて政府へ対策を要求するというパターンであった。
第二に、NPOを特権化させた議論が多いことである。たとえば、NPO法人の選挙への関わりを認めたとすると、公益法人である財団法人等も同様の権利があるとせざるを得ないが、官の指導監督下にある多くの公益法人がどのような行動を取るのだろうかということも考えざるを得ない。NPO法人もまた所轄官庁の管理監督の可能性があるのである。理念と現実の落差にたいするリアルな視線が必要である。
第三に、NPO法は過渡的な法律であり、「促進法」という名がそのことを如実に表しているように、ある意味で力関係の産物である。であるから、政治活動禁止の規程の改正は十分可能である。しかし、そこには市民的・国民的合意というか、「いいではないか」あるいは「やるべし」という感覚の共有が必要だろう。その意識をどうするかという方向性のない議論は「上から」の論理となる。
第四に、「政治」というものを固定的に考えてはいないだろうか、ということである。選挙や議員、首長に働きかけるということも政治行動なら、市民参加も地域で新たに福祉事業を始めること(高齢者給食を始める、グループホームをつくるなど)もまた「政治的」行動である。NPOという新しい革袋から見た場合、政治もこれまでと違った切り口で考える必要がある。
NPOあるいはNGOという意味
ひるがえって考えを整理しておかなければならないのは、なぜNPOがNPOであるのか、NGOがNGOであるのかということだろう。鍵となるのは、「ノン・プロフィット」と「ノン・ガバメント」の意味である。前者は単に利益を追求しない、利益配分を行わないということだけではなく、「市場」の外部に行動の立脚点を置いていることを意味するが、かといって「統治」の側にいるというわけではない。第三のセクターとしての行動原理を明確に社会に示していくことが求められているということだろう。
後者は、通常「ガバメント」すなわち議会も含めた政府セクターに属さないという理解である。これは、政府セクターではない市民セクターが、さまざまな社会課題を直接的なコミットメントによって解決していこうという行動原理をもって、「公共」領域のもうひとつの担い手として登場しているという意思がそこに表明されているものと考えられる。ガバメントでないからこそ、先駆性においても、質的にも、効率面からもよりよい制度提案ができ、事業が行えるのである。そして、「ノン・ガバメント」には、もう一つ非権力的な行動原理に依拠するという側面がある。法による規制や強制によるのではない、市民の自発的な行動とネットワークがこれからの社会の運営に必要という認識である。
こうした「ノン・プロフィット」性や「ノン・ガバメント」性がNPO=NGOの優位性であり存在意義であるが、それはどのように保証されるのだろう。政府セクターによってだろうか。そうではない。自分自身の存在や行動によって定義づけられるのである。政治との関係においてこの事に特に留意する必要がある。
「政治」をどう考えるか
次に、「政治」をどう考えたらいいのか。
狭義の「政治」と広義の「政治」の例を表1に示したが、NPOは既に広義の政治には大きく関わっている。現在の話題は狭義の政治領域との関わりが中心であるようだが、市民セクターと政治の関係を模式化した図1を見るとわかるように、法(条例)を通して、全構成員に影響が及ぶ(表1の包括的な政治領域)ことが政治のひとつの本質である。
つまり、政治とは、最終的には権力行為である。いわゆる改革派の首長がさまざまな壁を打ち破っていけるのは、権力を持っているからにほかならない。この権力を行使して、社会課題の解決に当たろうというのが、政治および選挙の表層の意義である。
社会課題の解決、だけではなく、NPOのミッションに、ある社会目標の実現を掲げることは自然である。それが総合的な社会(まちづくり)ビジョンであるかもしれない。それを実現するために、首長や議員を推薦したり応援したり立候補したりすることもあるだろう。要するに、そのNPOは、地域社会で実現したい目標像を地域全体のものとし(少なくとも多数が賛同するもの)、地域共有の資源(税、行政組織など)を投入することを目指すわけである。実行をだれがするかはともかく、目標実現のために強制力(権力)を行使するという点が、この議論の核心である。
このあたりは、先に述べたNPOの非権力性とどう関係するのかは今後の議論であろう。ただ、この点に自覚的であることが、NPOが政治と関わる上での必須の条件である。無自覚であれば(あるいはこのことを隠蔽すれば)、政治過程はおのずと抑圧的になることは世界史が証明している。
もう一点留意すべきことがある。NPOはおおむね特定の課題についての活動である。政党は、ある社会目標を目指して複合的かつ総合的な政策セット(マニフェストとして表現されることもある)を主張し、実現を図る。もしNPOが上記のような大きな地域像の実現を図ろうとするなら、政党との区別はつきにくい。それでも、NPO法人として活動するというのであれば、政党という古い装束をきらって、NPOという見栄えのいい衣装をまとうことなのであろうか。それとも、「ノン・プロフィット」や「ノン・ガバメント」にこだわった、全く新しい政治スタイルを構築していこうという志向なのだろうか。
社会変革と政治性
NPOにとって重要なことは、社会課題の解決というミッションであり、ミッションの実現という大義にとっては、「NPO」は形式に過ぎないので、次のステップとして政治的な解決を追求するというのが成長の段階である、とも考えられる。もちろん法や制度づくりにおいてはこのような段階を踏む必要があることはいうまでもない。
しかし、このようなステップアップの物語には幾ばくかの違和感が残る。その原因は、誤解を恐れずに言うと、掲げられたミッションの達成がNPO活動の本来のゴールではないからではないか。「いまや運動組織は、目的実現のための手段とは考えられておらず、それゆえに(運動の効果という)道具的合理性の述語のみによって評価することはできなくなっている。組織は自己再帰的性格を帯びており、その形態は行為自体の意味(ないし目標)を表現する」(A・メルッチ「現代に生きる遊牧民」岩波書店,1997年)とも言えるのである。つまり、NPOなどの活動には、活動の形式や組織の形態自体が、その目標とする未来の社会状態の一部を現在に実現することを求められているということなのだ。そこが、現代のボランタリーな活動の魅力なのである。ここでは、目的と手段が分かちがたく融合しているといえる。
そうすると、先ほどの政治との関わりや政治運動への移行は、二つの意味を持っていることが見えてくる。
ひとつは、政府セクターの(権力)性を利用して社会課題解決というミッションを実現する、という戦略性。いまひとつは、今述べたように、「政治参加」のスタイル自体が「未来を実現した」姿を生きることを暗黙のうちに求めているということなのだ。この視点からは、NPOの政治への関わり方は、選挙にせよ立候補にせよ、ロビイングにせよ、「ノン・プロフィット」と「ノン・ガバメント」に基礎をおいた新しいスタイルを開発していかなければ、充分な成果は望めないということが導かれる。
このように、NPOのミッションと分かちがたい社会変革性は、活動の自己変革と対象の変革(方法も含めて)の二重性をはらんでいるのである。
いいかえれば、この二つの変革のモデルを呈示できたとき、NPOの政治参画は公益的社会システムとして人々の期待を担うことになろう。
注)「NPOと政治」については、アリスセンターの機関誌『たあとる通信 第11号』に特集があり、各論文はそれぞれの問題を明瞭に指摘し、興味深い。特に、NPO法の立法過程を参照しながら、NPO法の法としてのあり方を含めて論じた鼎談「NPOは政治活動・選挙活動が制限されるか?」はぜひ参照されたい。
((特活)NPO政策研究所/直田春夫)
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