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豊かな自然が残る高知県・柏島。ここに拠点を置くNPO法人黒潮実感センターは、「島まるごと博物館」をコンセプトに、総合的な環境保全に取り組んでいる。その事務局長を勤める山下正樹さんは、銀行員からNPOへの転身を果たした人物だ。「転勤を命令され続けた人生」から「自分で転勤辞令を出す人生」へ、何を求め、どのように舵を切り替えたのか?ご本人に語っていただいた。
柏島は四国の西南端、高知県幡多郡大月町の太平洋と豊後水道が接するあたりにある小さな島である。四国本土とは2本の橋で結ばれているが、高知市から車で約4時間、周囲約4キロ、人口約530人の柏島は、日本でも有数の海洋生物の宝庫だ。島の魅力は何と言っても透明度20メートルを超える澄んだ海とそこに棲む色とりどりの熱帯魚やサンゴたち。その豊かな自然を求めて年間約三万人ものダイバーや釣り客が訪れる。しかし、あまりにも来島者が増えたため環境が荒れ始めた。ダイビングによりサンゴが壊されたり、ゴミ問題も発生している。漁の邪魔になると、ダイバーと地元漁業者との対立も深まってしまった。
黒潮実感センターは、自然があふれる柏島を「島まるごと博物館」ととらえ、海洋研究や環境保全・環境学習、島おこしなどの拠点として活動している。平成10年7月、研究者や町関係者らによる設立準備委員会が発足。設立委員会を経て、昨年10月、NPO法人の認証を得た。それまで、センターの活動は高知大学講師の学者が一人でこなしてきたが、学術研究や環境学習会、高知大学での授業などに追われて、地元対策や官公庁との交渉、事務局処理などが手薄となった。私は3年前に島で活動する黒潮実感センターのことを新聞で知り、「箱モノ博物館のガラス越しの展示ではなく、ありのままの自然を見てもらおう」という考え方に共感した。以後、大阪市内に勤務しながらボランティア組織の立ち上げなどセンターの設立準備に奔走した。その姿を見て、行政や関係者から「豊富な社会経験を生かして常勤の事務局長として来て欲しい」と強い要請があった。
広島県呉市出身の私にとって、幼い頃から海は生活の一部だったこともあり、島での仕事は魅力的だった。しかし、58歳での早期退職など経済的に家族に負担をかけることが一番の気がかりであった。家族は「今まで、私たちのために頑張って働いてきたのだから、体力のあるうちにやりたいことをしたら!」と理解を示し、賛成してくれた。私は「銀行員として命令され続けた転勤人生に、一度くらいは自分自身に転勤辞令を出そう」と事務局長就任を決意した。
昨年6月末定年二年前に早期退職、頭を切り替えようと翌日から四国霊場八十八カ所徒歩巡礼の旅に出た。梅雨の真っ最中の旅立ち、どしゃ降り続きでおまけに2回も台風に遭遇、梅雨明け後は一転して真夏の太陽が照りつける灼熱地獄の毎日だった。そのとき四国各地で受けた心からの「お接待」に四国の人々の優しさを痛感しながら、36日間かけて全行程一四〇〇キロをあるきとおし無事結願、高野山へのお参りも済ませた。これまでの会社人間から社会人間へ、接待人間からお接待人間への新たな出発だった。
柏島での仕事は、島の人との交流や行政・関係機関との交渉、島おこし「里海市」の企画や夏祭りの御神輿担ぎに観光案内などなど数え切れない。そんな多忙な毎日だが、今年4月には高知市の牧野植物園で橋本大二郎高知県知事や三十一番札所竹林寺の海老塚和秀住職と共にお遍路のシンポジウムに参加したり、地元大月町の人たちと番外霊場「月山神社」への遍路道を約50年ぶりに復元した。
毎日いろんな事が起こり超多忙であるが、銀行員時代との一番の違いは、これまでの経験を生かして島の人の役に立つ仕事ができていると実感できることである。島には飲み屋やカラオケボックス、信号機が無く静かで豊かな時間が流れている。豊かな自然に囲まれ美味しい海の幸を食べ、健康な暮らしができる。人情豊かな人々との濃密な人間関係も暮らしやすい。やり甲斐ある仕事と豊かな環境の中で充実した日々を過ごしている。
((特活)黒潮実感センター/事務局長・山下正樹)
華麗なる競演(饗宴!?)〜『釣りバカ日誌14』出演エピソード〜
今年5月10日から約1週間、柏島を舞台に撮影された松竹の看板映画『釣りバカ日誌14』で、ロケ隊支援ボランティア責任者として毎日観客整理や俳優さんのお世話などをした。そして何と!エキストラとして映画の見せ場である宴会シーンに釣り客として出演、西田敏行さん、三国連太郎さん、高島礼子さんたちと競演(!?)したのである。おまけに酒を呑むシーンでは本来水を使うところを「(宴会の)雰囲気が出ない」と本物の酒を飲んで酔っぱらい、監督さんの高知ロケ・エピソードとして新聞記事にまでなってしまった!!宴会シーンで高島礼子さんの横で騒ぐ日焼けしたおっちゃんにご注目を!
●連絡先
特定非営利活動法人 黒潮実感センター
〒788-0343 高知県幡多郡大月町柏島625
TEL 0880-62-8022 FAX 0880-62-8023
E-mail kuroshio@divers.ne.jp
URL http://online.divers.ne.jp/kashiwajima

右端が山下さん
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