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芸術の必要性について考えてみる。これを読まれている読者のなかには、「あってもなくても一緒。芸術で腹が一杯になるのかね」と、ある意味もっともな発言をする方もおいでだろう。たしかに、日々の生活に追われている現代人にとっての芸術の位置付けはその程度なのかもしれない。ましてや、この消費社会のなかでは人の心は移ろいやすく、それが芸術の商品化に拍車をかけている面もある。今回紹介するのは、かくも扱い難い“芸術”を生業としている一人の女性のエピソードである。
「演劇を離れようとする度に事件が起こって、気がつけば舞台に呼び戻されていました。」
こう語る『ミュージカル☆SHOW-COMPANY』の代表・阪上めいこさんは、生粋の舞台人といっていい。幼稚園の時、慰問に訪れた病院で、お年寄りの前で演じたときから彼女の演劇人生は始まる。多忙を極める阪上さんのキャリアは紙上では書ききれないが、演劇を職業としている以上、平坦な道のりではないことは想像にかたくない。それでも、演劇にかける情熱は並々ならぬものがあり、それが昂じて、時には周囲の誤解を生んでしまうこともあったという。そんな阪上さんのターニング・ポイントとなったのは、多くの孤児を前に演じたときである。
自己顕示欲の強い人間が集まり、誰も自身のスキルアップに余念がないのがこの業界の常だが、彼らの瞳を前にしたこのとき、相手の立場を考えて演じることの大切さに気づいた。これは彼女の演劇における信念を決定づけた。
「演劇はいわば絵空事。しかし、架空のできごとだからといって、そのメッセージが軽いものであってはならないのです。自らの人生経験をさらけだし、お客さんの人生に恥じないような誠実なものでないと。」
それまで興行面で成功を収めていたにも関わらず、目標としている舞台とのギャップを感じ出演者の大部分を入れ替えてしまうこともあった。
ホームレスを公演に招待したことがあった。明日への希望が持てない人達の目から涙が光った。千円札を手渡そうとする人もいたという。阪上さんのミュージカルが人の心を動かす理由を探った。
「人は“夢の球根”をもっていることに気づいていないのです。それに働きかけるのが私の役割ではないかと。論理的に分析するのでなく、直感的なものとして感じてもらえるものを創りたい」
阪上さんが考える演劇とは、“感じて演じる”ことにあるという。
「役者が人生の様々な問題ときちんと向き合うことで、お客さまに精神的背景を感じていただける作品となる。ウソはつけない。人間として常に(お客さまと)同じところにありたい。」
舞台上で繰り広げられるそんな人生の一コマを、自分の姿と重ね合わせて見る者は涙するのであろうか。それは、普段とは違う自分との出会いでもある。
精力的に活動する阪上さんのパワーはどこから来るのか?
「人間が情熱的なんでしょうね。時々自分のなかの愛情が溢れてきて困ります。とにかく、舞台づくりについては決してあきらめたくないのです。」
妥協しない姿勢、そして、何より好きなことをしている時間は疲れなど感じないという。
「これからも愛や思いやり、やさしさなど、シンプルだけれど誰もが持っている大切なモノを思い出してもらえる作品を作っていきたいですね。」
穏やかながら力をこめて阪上さんは語る。
「そのようなハートフルな舞台によって、一人でも多くの人に希望の灯りをともすことが、私の使命なんです。」
芸術は生きている誰もが抱えている普遍的な叫びに近い。確かに自分がここに存在したという生の証とも言えよう。それらが集約された舞台を前にしたとき、人は普段の生活の中でほとんど忘れそうになっている、もう一人の自分―心を動かされ、希望を見出す自分―に出会う。芸術に触れて、そんな自分に会うのも悪くはないと思うのだ。
(澤本雅典/編集委員)

「ファイヤーステーション」ステージ
●連絡先
SHOW-COMPANY(ショーカンパニー) 代表 阪上めいこ
Tel.0729-48-0132 URL http://www.musical.co.jp
☆新作ミュージカル「セレンディップの贈り物」
2004年7月17日(土)pm6:30 大阪市中央公会堂
前売/4,500円(当日5,000円)全席自由
<チケット取扱い>
●ショーカンパニー 0729-48-0132
●チケットぴあ(ファミリーマート、サンクス、セブンイレブン)
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